結之介の中国語講座 中国語基本表現・語法

どうちがう? 助動詞“会”“能”“可以”

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解説内容: できる3つの助動詞 ・助動詞“会”と“能” ・区別のある助動詞“会”と“能” ・段階的な助動詞“会”と“能”
・“会”が使える「できる」と使えない「できる」 ・助動詞“可以” ・可能と許可の助動詞“可以”
できる3つの助動詞
助動詞とは中国語で“能愿动词”といい、日本でも「能願動詞」と呼ばれることもあります。
助動詞は必ず動詞の前に置かれて文字通り動詞を補助する役割があります。
できる3つの基本機能
“会”: 習慣的または練習や学習して得られた技能があって「できる」事を表現します。
否定の形は“不会”。“会”は日本語の「会得する」の「会」に相当します。
“能”: 動詞の動作を行うにあたり、空間・時間などの外的要素または主語が能力・技能を持っているという条件が満たされて
「できる」
事を表現します。
否定の形は“不能”。“能”は日本語の「可能」の「能」に相当します。
“可以”: 動作を行うにあたり、何らかの許可があって「できる」事を表現します。
否定の形は“不能”。“可以”は日本語で「可能ゆえに」という意味があります。

各助動詞については 結之介の中国語講座 表現・語法 能力の可能表現  助動詞“会”
結之介の中国語講座 表現・語法 条件の可能表現  助動詞“能”
結之介の中国語講座 表現・語法 許可の可能表現  助動詞“可以” をご覧ください。

助動詞“会”と“能”
助動詞“会”と“能”の違いを確認しましょう。
助動詞“会”: 她会游泳。 Tā huì yóuyǒng. 彼女は泳ぐことができます。
助動詞“能”: 她能游泳。 Tā néng yóuyǒng. 彼女は泳ぐことができます。

どちらも日本語にすると「彼女は泳ぐことが出来ます。」となりますが、助動詞“会”と“能”では「できます。」に含意されているものが違います。
助動詞“会” の「できます。」は 習慣的に 身に付いた技能 幼い頃から海で遊んでいたとか、スイミングースクールで遊びながら自然と
「泳ぎ」が身に着いた技能
学習して 身に付いた技能 泳ぐ事を目標にスイミングースクールなどで指導を受けて 「泳ぎ」が身に着いた技能 
練習して 身に付いた技能 泳げる基礎はあり距離、スピードを伸ばそうと練習して 「泳ぎ」が身に着いた技能
の、いずれかを含意しています。
ですから、幼いころから自然と身についても、指導を受けても、練習しても個人差があり、
10メートル泳げるのか200メートル泳げるのか、50メートルを何秒で泳げるのか、といった
「泳ぎの質」は関係ありません。
助動詞“能” の「できます。」は
二つの意味があり、一つは 助動詞“会”で含意される  「技能」が備わっていて  「泳ぐ」ことが可能かどううか。
もう一つつは 彼女に水着の準備が あって  「泳ぐ」ことが可能かどううか。
彼女が時間的余裕が あって  「泳ぐ」ことが可能かどううか。
彼女が泳げる場所が あって  「泳ぐ」ことが可能かどううか。
彼女の健康状態が良好で あって  「泳ぐ」ことが可能かどううか。
彼女は100メートル泳ぐ能力 あって  「泳ぐ」ことが可能かどううか。
彼女が他者より速く泳ぐ能力 あって  「泳ぐ」ことが可能かどううか。
といった技能のほかに外的要素が備わっていて可能なことを表現し、
実際に泳げるといったニュアンスがあります。

極端な話、会話の流れにもよりますが富士山の山頂で “她会游泳。” といえば世間話ですが
“她能游泳。” というと、「それは無理」な話になります。

上のことからわかるように 助動詞“会” は技能 何かをするにあたってのテクニックやコツ
助動詞“能” は能力 何かをするにあたっての一定のレベルまたは外的条件を表します。

助動詞“会”と“能”を使って下のような表現ができます。
她会游泳,可是只能游十米。 Tā huì yóuyǒng , kěshì zhǐ néng yóu shí mǐ.
彼女は泳げます、しかし10メートルだけです。
「彼女は泳ぐコツは知っているものの、そのレベルは10メートル泳げるだけの能力だ」いとう意味がこの文の中にあります。

限定語をつけるとさらに違いが明確になります。
助動詞“会”: 今天她会游泳。 Jīntiān tā huì yóuyǒng. 今日彼女は泳ぐことができます。
助動詞“能”: 今天她能游泳。 Jīntiān tā néng yóuyǒng. 今日彼女は泳ぐことができます。

助動詞“能”の“今天她能游泳。”は使えますが、助動詞“会”の方は注意が必要です、指導を受けたからといって昨日の今日で
「泳ぎ」が身につくかどうか微妙なところです。


助動詞“会”と“能”の違いが判るこんな表現もあります。
他很会吃。 Tā hěn huì chī. 彼はグルメだ。 美味しいものを食べる方法(テクニック・こつ)を習得している。
他很能吃。 Tā hěn néng chī. 彼は健啖家だ。 大量に飲食する能力が内臓的にも備わっている。

この副詞“很”は助動詞のある全ての文に置けるわけではなく、特に学習を必要としない“走”や“说话”などに限られます。
学習が必要な動作を「うまい」と表現するには様態補語を使います。
他说汉语说得很好。 Tā shuō hànyǔ shuōde hěnhǎo. 彼は中国語を話すのがうまい。
となり
她很会说。 Tā hěn huì shuō. 彼女は話すのがうまい。
她说得很好。 Tā shuōde hěnhǎo. 彼女は話すのがうまい。
では、意味が変わってきます。
例えば、アナウンサーに対して“她很会说。”というのは失礼になるかもしれません。



区別のある助動詞“会”と“能”
彼までの解説では状況によって同じ動詞に助動詞“会”と“能”を置くことで来ましたが
助動詞“会” は技能 何かをするにあたってのテクニックやコツ
助動詞“能” は能力 何かをするにあたっての一定のレベルまたは外的条件を表す用法の違いから
動詞によっては助動詞“会”と“能”が、それぞれ専属になります

“能”しか使えないものには
他很能干。 Tā hěn néng gàn. 彼は働き者だ。
他能吃苦。 Tā néng chīkǔ. 彼はよく苦労に耐える=頑張りがきく。
一見、テクニックやコツの“会”のような気もしますが、働く質と量なので“能”が使われます。
“会”しか使えないものには
他会表扬人。 Tā huì biǎoyáng rén. 彼は人を褒めるのがうまい。
他会偷懒。 Tā huì tōulǎn. 彼はサボるのがうまい。
人をほめていい上司になるにはハウツウ本に頼ってはいけないということですね。
人間の基本的な行動も助動詞“会”を使い“能”は使えません
孩子会笑了。 Háizi huì xiào le. 子供が笑えるようになった。
孩子会爬了。 Háizi huì pá le. 子供がハイハイできた。
孩子会站了。 Háizi huì zhàn le. 子供が立てた。
孩子会坐了。 Háizi huì zuò le. 子供が座れるようになった。
しかし、「泣く」「寝る」「見る」「聞く」には“会”が使えません、理由としては
“哭” 泣く: 人間として備わっている 能力・動物 としての必須条件
“睡” 寝る: 人間として備わっている 能力・動物 としての必須条件
“看” 見る: 目で見ることが出来ない 能力・他者 から確認ができない
“听” 聞く: 目で見ることが出来ない 能力・他者 から確認ができない となります。

段階的な助動詞“会”と“能”
これまでは、会得した技能の“会”と可能な技能の“能”といった条件で解説してきました。
状況や技能の対象物そして技能別に使い分けてきましたが、同じ状況、同じ対象、同じ技能でも使い分けのある例を挙げておきましょう。

それは、お酒です。
「お酒を飲めるか飲めないか」を尋ねる場合には、自ら飲めるという判断で飲み始め、
誰に弟子入りするわけでもなく教習所に行くわけでもないので“会”を使って尋ねます。
你会喝酒吗? Nǐ huì hē jiǔ ma? おなたはお酒が飲めますか?

と、尋ねる時に手持っているお酒は、ビールか一般的な白酒で、これがウォッカや焼酎だと
你能喝酒吗? Nǐ néng hē jiǔ ma? おなたはお酒が飲めますか?

の方がしっくりきます。
一般的に強いお酒を飲めるということは飲酒修練の賜物のようですが、一定の強いお酒を飲めるレベルの能力を尋ねているので“能”です。
タバコも同様ですね、軽いものからキツイものまでありますから。


この事柄に沿って考えると、冒頭からくどいように出てくる「水泳」ですが平泳ぎができるからクロールは“能”かというと
これは“会”です、平泳ぎとクロールではフォーム自体違うので学習するものも個々に違い、一からの会得なので“会”となります。


料理に関しても水泳同様“会”を使うようです。
彼が日本料理が得意なのを知っていて「肉じゃがが作れるかどうか」を尋ねる時でも
他会做日本的土豆烧牛肉? Tā huì zuò Rì běn de tǔdòu shāo niúròu? 彼は肉じゃがを作れますか?
となります、お造りや卵焼き、お好み焼きは作れても煮物はダメというのがありますから。



“会”が使える「できる」と使えない「できる」
助動詞“会”が動詞として扱われることがあります。
她会中国话。 Tā huì hànyǔ. 彼女は中国語ができます。
他会书法。 Tā huì shūfǎ. 彼は書道ができます。
他会电脑。 Tā huì diànnǎo. 彼はパソコンが使えます。

特定の動詞がない動作や複合的な学習を必要とするものは動詞“会”を使います。
“书法”が“写”ではなく“会”を使うには、何か理由があるのでしょう。
こうした学習科目に“会う”を使う一方、“会”も使えないものもあるようです。


他懂数学。 Tā dǒng shùxué. 彼は数学ができます。
他懂历史。 Tā dǒng lìshǐ. 彼は歴史ができます。

助動詞“可以”
やっと、助動詞“可以”の出番です。
助動詞“可以”には、 可能を表す “可以”
中国語 許可を表す “可以”
中国語 勧めを表す “可以” 、の3つの用法があります。

この3つの用法の中で助動詞“会”と“能”と紛れないのが勧めを表す“可以”です。
这本书可以你看看。 Zhèi běn shū kěyǐ nǐ kànkan. この本を読んでみたら。
となります。これは人に勧める文でも明らかに下の文とはニュアンスが違うことはの日本語訳からもうかがえます。
请这本书你看看。 Qǐng zhè běn shū nǐ kànkàn. どうぞ、ちょっとこれを見てください。
ただし、“请”で始まる文に重ね型を置けるかどうかは責任持てませんが“请这本书你看。”としても、ニュアンスには違いがあります。
“请” の方は 積極的に勧めているのに対し、
“可以” の方は 控え目に、行動を起こすか否かは相手に判断を委ねています。“可以”と重ね型の効果です。
もう少し例文を確認しましょう。
这菜倒可以尝尝。 Zhè cài dào kěyǐ chángchang. この料理なかなかいけるから食べてみたら
罗马是个好地方,倒去走走。 Luómǎ shì ge hǎo dìfāng, dào qù zǒuzou. ローマはいいところだから行ってみたらいい。
那个经理可以采访采访。 Nàge jīnglǐ kěyǐ cǎifǎngcaifang. この社長にインタビューしてみたらいいよ。
这个问题倒可以再研究一下。 Zhèige wèntí dào kěyǐ zài yánjiū yīxià. この問題はもう一度考えてみたらどうだろう。
最後の文は重ね型でなく“一下”を使いました。重ね型と”一下”も「ちょっと(少し)」という数量を表現しています。
勧めを表す“可以”には数量表現が置けることになります、この用法の否定には“不可以”ではなく“不值得”(~する価値がない)で否定します。
这本书不值得一看。 Zhè běn shū bù zhíde yī kàn. この本は読む価値がない。
「“可以”と重ね型」と「“可以”と”一下”」の否定には「“不值得”と“一”+動詞」で否定します。
重ね型ではなく“一”+動詞が使われるのは 平叙文の場合、普通 “可以” には重ね型と”一下”を使い、
“值得” には“一”+動詞を使うからです
なお、
平叙文の “可以” には“一”+動詞を使うことができず
“值得” には重ね型も使えますが先に解説したように“一”+動詞が一般的です。
なお、平叙文の
这本书可以看看。 Zhè běn shū kěyǐ kànkan. この本を読んでみたら。
这本书值得一看。 Zhè běn shū zhíde yī kàn. この本は読むに値する。
上の例文ではどちらも、人に勧めていますが“值得”の方にはダイレクトにズバリ勧めるニュアンスがあります。
“值得”の目的語が2音節の場合、“一”はなくなります。
这个问题值得研究 Zhèige wèntí zhíde yánjiū. この問題はやってみる価値がある。

可能と許可の助動詞“可以”
可能と許可を表す助動詞“可以”には、“会”と“能”と入替可能なものとそうでないものがあります。
你看明天可以下雨吗? Nǐ kàn míngtiān kěyǐ xiàyǔ ma? 明日雨が降ると思いますか?
我看你可以中奖。 Wǒ kàn nǐ kěyǐ zhòngjiǎng. あなたはくじに当たるでしょう。
上の例文のように「状況次第」「成り行き次第」の可能を表す時には、“可以”“会”“能”の入替が可能です。


「状況次第」「成り行き次第」の可能以外の可能表現には“会”は使用できず、“可以”と“能”を使い、両者の入替がほとんどの場合可能です。
“可以”と“能”を入替えても通常、意味は同じですが状況によってはニュアンスが変わります。例文でニュアンスを確認しましょう。
1. 这里能吸烟。 Zhèli néng xīyān. ここではタバコが吸えます。
2. 这里可以吸烟。 Zhèli kěyǐ xīyān. ここではタバコが吸えます。
1.は換気機能が設置されていたり、特に規制のない場所での可能。
2.は法律や規則や周囲の人の許可から許可された場所での可能。
3. 我一分钟能打三百个字。 Wǒ yī fēnzhōng néng dǎ sānbǎi ge zì. 1分間に300字タイプできます。
4. 我一分钟可以打三百个字。 Wǒ yī fēnzhōng kěyǐ dǎ sānbǎi ge zì. 1分間に300字タイプできます。
3.は1分間にタイプできるベストが300字程度。
4.は1分間にタイプできるベストが300字以上可能で余裕があります。
5. 这辆车能坐五个人吗? Zhè liàng chē néng zuò wǔ ge rén ma? この車は5人乗れますか?
6. 这辆车可以坐五个人吗? Zhè liàng chē kěyǐ zuò wǔ ge rén ma? この車は5人乗れますか?
5.は車体の容量的に5人乗れるかどうか?を尋ねている。
6.は規制や道交法などで5人乗れるかどうか?を尋ねている。
7. 这间房子至少能住十年。 Zhèi jiān fángzi zhìshǎo néng zhù shí nián. この部屋は少なくとも10年は住める。
8. 这间房子至少可以住十年。 Zhèi jiān fángzi zhìshǎo kěyǐ zhù shí nián. この部屋は少なくとも10年は住める。
7.は部屋の造りや材質の耐久上、あと10年は住める可能。
8.は契約上10年住めるということで耐久性とは関係ない。
上の例文から 助動詞 “能” は対象そのものの能力や許容する 可能に使われ
助動詞 “可以” は外的・人為的規制による 許可に使われることが判ります。
ちなみに助動詞“可以”の否定には“不可以”も使えるが通常は“不能”で否定します。


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